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物語に読者・観客を引き込むためには、感情を揺らさなければなりません。

今回取り上げる「アカデミー賞映画で学ぶ映画(シナリオ)の書き方」では、
ドラマであるには『心のふり幅を日常の外に放りだすだけの劇性が必要』といっています。

では、人々の心を日常から飛び出させるほどの劇性は、どのようにして生めばいいのでしょうか。 



シナリオにとっての劇性はワクワク・ドキドキ

『劇性とは、劇的なる度合いのこと』というのが本書の定義です。
ただし、表面的な刺激の強さで推し量ることはできません。
物語を引っ張るにはあっと驚くような刺激というよりは、心を揺り動かす刺激でなければならないでしょう。

刺激を与える方法に定型はなく、
いかにしてワクワクドキドキ、喜怒哀楽を引き起こすかがポイントになってきます。
その要因とおぼしきものを考えていきましょう。


シナリオにおける事件・葛藤

ストーリーを劇的にする手っ取り早い方法として紹介されているのが
『事件を発生させること』。

大金が手に入る事件はポジティブな方向、
誰かが亡くなってしまう事件はネガティブ方向に感情を触れさせるわけですね。 
多くのシナリオライター(志望者)が特異な事件を考え続けていますが、
問題もはらんでいます。 

それは本書にあるとおり、
「事件が起きたところで劇的になる保証はない」 ということ。

人はどんなことにも慣れてしまいます。
発生した瞬間こそ盛り上がるものの、驚きは続きません。

劇的=事件を起こすことだとすると、飽きが来るタイミングで次から次へと
新しい事件を投じなければならなくなってしまいます。実質的に不可能ですね。

そこで、感情を揺らし続けるために『葛藤』が用いられるのです。 


マンガでも映画でも同じ。ドラマは葛藤!

葛藤が起こる前には障害がつきもの。
主人公の達成する目的が邪魔されるからこそ、葛藤が起こります。

たとえば、本書で挙げられているのは「ローマの休日」です。

日ごろから自由のない生活にウンザリしていた主人公の王女様はローマを公式訪問した際についに爆発する。そして失踪する。王女の目的は自由という空気を味わうこと。しかしそのことをかぎつけた新聞記者がいる。彼は王女に接近。彼にも目的がある。それは王女の失踪というスクープをものにして高値で売りつけること。このふたりの目的は相手の利益を侵害することで達成できる。新聞記者は王女を愛してしまい、せっかく手に入れたスクープを売れない。王女は新聞記者を愛するが愛と義務の間で揺れる。障害ゆえの葛藤。

王女も新聞記者も平等に描くことで、それぞれの事情を知っている観客はどちらか一方に味方できません。どうにか幸せになってほしいと願い、ドキドキするのですね。

誰かの目的が達成されてこその物語であり、そこには勝つか負けるかしかありません。
王女の目的<ローマの休日を楽しむ>は達成していますが、
新聞記者の目的<スクープをものにする>は敗北。ふたりの愛の成就は…というように。 

目的と障害の対立が葛藤を生んで、やがては物語の劇性になります。

物語には目的を持った人物が不可欠!欲望を持つ主人公をシナリオにしよう

目的はいわば欲望、渇望です。
つまり強い願いのことで、それがない人物は物語の主人公にはなりえません。 

叶っても叶わなくてもいい願いは強い欲求ではないので、
主人公が持つ目的、願いは死んでもかなえたいほど強くなければならないでしょう。


まとめ

シナリオに劇性を与えるための
主人公への『目的の付与』を本書から引用します。

( 1 )主人公に目的を明言させること。
( 2 )問題(事件)を発生させる。
( 3 )上の組み合わせ。


1は自ら積極的に目的を与える方法。2は消極的ではあるものの、対処しなければならない目的。
3は最初から目的に向かって動いている途中に、さらに問題が起こって展開が転がるパターンですね。

「海賊王になりたい」ルフィが主人公のマンガ・ワンピースは、すべての要素が含まれています。
多くの読者を惹きつける作品には、理由があるということでしょう。

物語の作り方については、ほかにも『脚本術』にまとめています。